私の一押しBセグメント車であるところの6Rポロですが、今回紹介するのは2013年登場のブルーGTです。このブルーGTというグレード、低燃費&スポーツという当時としては珍しいコンセプトで登場した車でした。
環境を意識したBセグメントとして、当時の競合であるホンダ・フィットハイブリッド、トヨタ・アクアとともにまとめると以下のようになります。
このように、ポロブルーGTは、燃費が悪いけれど動力性能が比較的高いといったところを狙っています。カタログ値の燃費では大差をつけられていますが、実燃費で比較すると、ポロの燃費も国産ハイブリッド勢に比べて極端に悪いわけではないようです。私がフォルクスワーゲン系の車を好む理由の一つに、カタログ燃費に近い実燃費が出せるところがあります。
(https://e-nenpi.com/enenpi/cartype/11330 https://e-nenpi.com/enenpi/cartype/11804 https://e-nenpi.com/enenpi/cartype/11413より)
エンジンは1400cc4気筒のシングルターボで、馬力は150PSを発揮します。同時期のベースグレードのポロ(105PS)とスポーツグレードのGTI(179PS)の中間ですね。
環境にも配慮して、フォルクスワーゲンで初めて気筒休止システムを搭載しました。これは現在のVW1.5リッター4気筒エンジンにも(そして同グループのポルシェにすら)搭載されている技術で、低負荷時に2,3番の2気筒が停止して燃費を稼ぎます。さらに、ブルーモーションテクノロジーと言って、12Vバッテリーへの発電を減速時に行い、アイドリングストップシステムも搭載しています。ベースグレードでCd値0.32ですが、さらなる空力改善のためエアロパーツも充実しております。このように当時の最新技術を盛りに盛っています。
エンジンは低回転域からしっかりブーストが掛かり、スムーズに加速していきます。巡航に移ると、意識すれば2気筒に切り替わったところは感じられますが、アクセルを踏みたすと瞬時に4気筒点火に切り替わり、十分なトルクが出てきます。ターボラグこそ残っていますが、低回転域からしっかりとトルクが出て、非常に乗りやすいと感じます。動力性能としては、100km/hまで8秒弱で到達できます。個人的には、特に厳つい見た目でなく速いという点が非常に好みです。実際の燃費もパワーの割に良好で、試乗時で20km/l程度走っていました。
トランスミッションは様々な評判がある7速乾式DCTですが、この個体は8万キロ走行でもまだまだ大丈夫そうでした。ポロは車重が軽いので、持ちが良いのかもしれません。渋滞等で多用すると3万キロでアウト、ドイツのようなストップアンドゴーが少ない環境で半クラッチ時にあまり回転数を上げないことを意識すれば10万キロ以上持つようです。実は、トランスミッションの制御がヨーロッパ仕様と異なります。日本仕様では、疑似クリープ的な部分が強く出ていて、変速時もかなり柔らかいです。MTのダイレクト感が常にある上に、変速操作は電光石火で自動化されているので、振り回すならめちゃめちゃ楽しめます。
ところで、コースティング(クラッチを切った惰性走行)は実装されておりません。コースティングを実装すればさらに燃費が良くなるはずなのですが、ない理由は走りのクオリティのためだと思います。MTを運転したことある方はわかると思うのですが、クラッチを切った走行はちょっと怖い思いをします。(最近試乗したゴルフ8GTIにはコースティング機能がついていて失望しました。スポーツグレードのはずなのに……)
運転していて実感するのはトランスミッションの賢さと4気筒時のエンジンの扱いやすさです。Dレンジであれば、アクセルを踏みたすと、どの回転数からでもキックダウンせずにトルクが出てきます。もちろんタービンが回るまでの若干のラグこそありますが、キックダウンをしないためにトルクの抜け感がなく、私はこういった制御が非常に好みです。一方で、キックダウンスイッチまで踏み込むと、6000回転まで引っ張りながら猛然と加速していきます。また、長い下りでブレーキを一定で踏み一定速を保っていると、エンジンブレーキが必要だと判断してギアを下げてくれるモードも確認しました。ただの樹脂部品ですがパドルシフトもついており、必要があれば自分でガチャガチャ出来て、レーシングカー気分を楽しめます。
サスセッティングとして、ポロの普及グレードは、普通の小型ハッチバックで、バネとダンパーがゆったりとして人間に優しく、大きくロールします。一方でGTIはガチガチにバネとダンパーが固められ、一般人には耐え難い乗り心地でありますが0.7G程度の領域までガンガン攻め込んでいく気になります。
このブルーGTは、比較的にソフトなバネ・ダンパーが組み合わされているようで、比較的許容しやすい乗り心地であると街乗りでは感じました。一方で、大きな段差等に対しては内臓が揺さぶられるかのような衝撃が来ます。どうやらこのグレードは、ポロのベースグレードに比べて車高が15mmも下がっている(GTIと同等)ため、縮みストロークが短く、バンプタッチ後に急速にバネレートと減衰が上がったような動きが出てしまいます。また、タイヤの扁平率が低いことも突き上げの強さをもたらします。きれいな道を走っているぶんには良いですし、多少攻め込んでも破綻しないような印象がありますが、舗装が悪い路では許容しかねるレベルであると感じました。
さて、スポーツグレードであるからにはコーナリングも評価しましょう。0.5G旋回程度までなら気持ちよく動くのですが、0.6G程度の旋回をしようとすると以下のような動きをします;
1.ブレーキングで鼻がすっと沈むが、
2.バンプラバーで突っ張り、
3.その後にブレーキングを緩めつつステアリングを切り込むとGTIよりも素早くヨーが立ち上がり、
4.バネの弱さから一気にロールし、
5.バンプラバーで突っ張り外輪に一気に荷重が乗り、
6.脱出に向けてステアリングを戻しつつアクセルを開けていくと内輪の接地の弱さから内輪が掻く。
7.そこで、内輪にブレーキを掛けて疑似LSD(※)的にぐっと曲げる。
※フォルクスワーゲンではXDSと呼ばれるシステムである。コーナリング中にアクセルを開けると、通常では内輪の荷重が小さいために駆動力で空転し、ディファレンシャル機構のために外輪からも駆動力が抜ける。そのため、内輪側にブレーキをかけることで外輪の駆動力を維持する。
総合して、私はこの車について高く評価されるべきであると考えます。高剛性なボディと優秀なエンジン・トランスミッションがエコ&スポーツという一見矛盾する2要素を高次元で実現しています。エコ&スポーツというのは今のVWでも非常に重視されており、先見の明があったと言えます。
一方で、デザイン性重視の低扁平率なタイヤと無闇に下げられたサスペンションに関しては疑問符が付きます。更に悲しいことに2022年のゴルフ8GTIでも低扁平タイヤと車高短による乗り心地悪化の傾向が見られています。ドイツ・ワイマール共和国時代の美術学校"バウハウス"は現代まで大きな影響を与えていますが、バウハウスの「形態は機能に従う」という精神はどこかに忘れ去られてしまったのでしょうか。
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