ちょっと距離を置いてみると見えることもあると思います
きれいなものは遠くにあるからきれいなの (『愛をこめて花束を』 より)
1. はじめに 現在のロードレーサー
まず、ロードレーサーがディスクブレーキに移行しました。それに伴い、デュアルコントロールレバー内に重たく巨大な油圧マスターシリンダーを内蔵することになり、変速ワイヤー巻き上げ機構が追い出されて、ロードレーサーは電動化に相成りました。これにより、コンポ類の部品代が高騰します。さらに、空気抵抗の低減のためハンドル・ステム・ホイールをもフレームと一体開発するようになり、開発費のさらなる高騰を招いた結果、ロードレーサーの車体代は大きく跳ね上がりました。
この結果として、2000-2017年くらいまでのリムブレーキ機械変速でロードレーサーを楽しんでいた人達からすると、同等グレード品がいきなり値上がったように見えました。一時はディスクブレーキ不要論とも結びつきましたが、結局はディスクブレーキ&電動変速全盛の時代を迎えました。かくして、ロードレーサーは、その速さに更に磨きをかけ、超高級品になり、おいそれと買える価格ではなくなり、自転車店では有り余った在庫を抱えるようになりました。尤も、業界人たちはこのような状況下でも以前のようにロードレーサーが売れるように苦心しているようですが。
2. 電動変速化とディスクブレーキ化に伴うロードレーサーの本質的な変化
ここまで書いてきた内容はこれまでも擦られて来ましたが、ロードレーサーって本来はロードレースという自転車競技のための競技道具なわけです。たまたま、その競技道具が、2000-2017年位までの間は"自転車で公道を楽に遠くまで速く行くという遊び、すなわちサイクリングの手段"としても適正があったために、ロードレーサーが広く親しまれ売れていただけです。
そして、近年のロードレーサーが、競技道具としてどんどん洗練されて行って高度化していった結果として、車体金額やメンテナンスの難易度ともに"自転車で公道を楽に遠くまで速く行くという遊びの手段"としては適正を失っていき魅力も失っていたということです。
したがって、エアロで電動変速でディスクブレーキ化してチューブレス化した昨今のロードレーサーを過去のように売ろうと言っても、それは土台無理な話なわけです。いくら速くなったことを売り文句にしようが、今のロードレーサーはかつてのロードレーサー購入層の殆どには刺さりません。ロードレースという自転車競技をやっている人口って本来どれだけいましたか?切り分けるパイが小さくなっただけです。
3. ロードレーサーの歴史からみた展望
そもそもとして歴史を振り返ると、少なくとも1980年代まで、この自転車は"Road Racer"と呼ばれていました。名の通り、レースの道具だったわけです。この頃のロードレーサーは、ブレーキが効きづらく、変速が難しいシビアな乗り物でした。
そこから21世紀に入るにつれ、いつしか"Road Bike"という呼び名に取って代わられ、この頃にはギアのフリクション→インデックス化、ダブルレバー→デュアルコントロールレバー化、シングルピポッドブレーキ→デュアルピポッドブレーキ化などの技術の広い採用に伴い、この類の自転車が格段に乗りやすくなりました。
出会い系がマッチングアプリと名前ロンダリングして人口に膾炙したのと同様、ロードバイクという名前からもレース道具感が薄れ、"自転車で公道を楽に遠くまで速く行くという遊びの手段"としての適正を獲得します。こうして、畢竟、高級クロスバイクとして非常に大きなパイを獲得していました。
2018年頃から、空力の追求に加え電動変速とディスクブレーキ化とチューブレス化が本格的になると、今度は金額とメンテナンスの難易度が非常に高度になりつつあるというのが現在の段階です。
このように、
1980年代まで:扱いの難しいプロの道具
↓
2017年位まで:比較的手の届きやすい広く遊びに使える道具
↓
現在 :金額とメンテナンスが高度で超高性能なプロの道具
という変化をロードレーサーは辿ってきています。そして、次章の内容になりますが、金額とメンテナンスの高度化と超高性能化はとどまるところを知らず、現在の傾向はどんどんと加速するでしょう。
4. ロードレーサーの高度化はレーシングカーの高度化を見れば明らか
さて、ロードレーサーの高度化というものはレーシングカーの歴史に非常に近いものがあります。
第二次世界大戦前までのレーシングカーは、非常に巨大なエンジンに未成熟なタイヤで極めて危険なものが多数ありました。アウトウニオンのPワーゲンなどはその最たるものです。一般人用もへったくれもないものばかりでした。
そこから、1950年代には、レースで活躍した上に市販バージョンも売られるジャガーCタイプなどが登場します。この頃には、技術の成熟もあり、レーシングカーを一般人にも売ることができるくらいになっています。1960年代には市販車(キットカー)であるロータス・セブンがF1にスポット参戦し脚切りされずに見事ゴールしています。このように、公道を走るスポーツカーとレーシングカーが近づいた時代がありました。
1980年代にはルマン24時間レースはCカーにより争われるようになり、F1は言わずもがな、レーシングカーのエアロ追求・高度化・高額化はますます進み、市販車とは似ても似つかないものが走るようになり、このようなレースに莫大な費用がかかるようになりました。
すなわち、ロードレーサーはレーシングカーの歴史の相似を50年遅れでやっているのに過ぎないわけです。したがって、ロードレースが滅びず開発予算が出る限り、また開発に規制がかからない限り、ロードレーサーはますます先鋭化していくでしょう。
5. ロードレースをやらない我々は何に乗れば良いのか
さて、公道で乗る比較的手の届きやすく広い遊びに使える道具としてのロードレーサーは、過去になりました。一方で、自転車遊びは滅んでいません。荷物積んで数日ツーリングするなら、グラベルロードのなかで手頃なやつがあると思います。楽に峠に行ってオフロードも軽く散策して美味しいご飯食べて帰ってくるみたいなのをやりたいなら、e-MTBもいいと思います。距離が40kmとかだったら、クロスバイクもいいでしょう。
私はといえば、ちかごろ普段着&ブロンプトンで近所を散策しています。距離は昔に比べ随分短くなりましたが、これはこれで楽しいものです。



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