シトロエンC6という車を知っているだろうか。
C6とは、フランスのシトロエンから2005-2012年に発売されていたDセグメントセダンである。当時のフランス大統領であるニコラ・サルコジの移動車両として使われていたことは記憶に新しい。大雑把に言えば、当時のシトロエンのフラッグシップ車両だ。 ヘッドライトからテールライトへ連続して繋がる伸びやかなデザイン、凹型のテールガラスの形状などシトロエンの独創的なデザインが盛り込まれていて今なお色褪せない魅力がある。 幸いにも機会があって、C6の後部座席に乗せていただいた。気分は仏大統領だ。
まず、内装であるが、ルイ・ヴィトンのエピのように見える表面加工がされた樹脂に覆われている。全くベタついておらず、なかなかに優秀である。後部座席はDセグメントなりの広さで、その特色はシートの作り込みにある。決してバケット状に凹んでいるわけではないが、座ると横Gがかかっても全く身体がズレず快適だ。立体的な形状の"芯"があるようなフィールで、骨盤や肩甲骨といった部分を的確に支えてくれる。
パワーユニットはトルコンATとV6自然吸気エンジンが組み合わされ、GTカーとして過不足ない。意外と驚くのは、高級乗用車に分類されるはずなのに、エンジンサウンドを完全に遮断しておらず、車内でも控えめながらV6の存在感があるのだ。そして、そのサウンドが全く不快ではないどころか、トルコンATのステップや車体の加減速と音が一致していて、後部座席ではかえって安心感がある。そして、車内はレクサスLSほどの静粛性はないのに、車内の人間の会話はむしろC6のほうが通りやすいのだ。徹底的な吸音遮音だけではないのに快適なこのセッティングは本当に不思議で、機械の測定だけでは作れないような気がしてくるほどだ。
そして、この車の最大の特徴は、空気ばねと車高調整機能を備える油圧ダンパーを組み合わせたハイドロニューマチック・サスペンション、その最終世代である"Hydractive 3 plus"が採用されていることだ。特徴は、油圧の動力源がエンジン直接ではなく電動になったことで始動時からすぐに油圧が立ち上がるようになったこと、舵角センサー・ペダルセンサー・Gセンサーから電子制御されるようになったことだ。電子制御といっても現代より単純な2モードで、4輪独立1スフィアの"ハードモード"と 左右2輪接続3スフィアの"ソフトモード"を適宜切り替えながら走る。(ハイドロニューマチックサスペンションは、基本的に左右が繋がっていて、前後が車高調整時以外は独立という構成になっています)
C6の乗り味は独特だ。路面の微小な凹凸に関しては綺麗に処理し、車体上屋にはほぼ伝えてこない。さらなる特徴は、大きなうねりのような凹凸を拾った時の挙動に現れる。時速50km/h程度ではフロントの上下動は短い時間で収まるものの、リア側は長周期で角を丸めながら間延びしたように収める。従って、50km/hではピッチングが出る。これが、時速90km/hを超えてくると前後が同位相で動き、フラット感が出てくる。おそらくフランスでの実用速度域がそのあたりで、合わせこんであるのだろう。そして、ハイドロニューマチックサスペンションは1人乗車でも、4人乗車+重荷物であっても同じ車高に設定される。
C6は、パヴェ(石畳)と、流れが速いが雑な作りの郊外道路/高速道路に合わせこまれていて、その領域で非常に快適な自動車だ。さらに、1人での通勤から満員乗車での長距離移動(バカンス)にも対応するためのハイドロニューマチックサスペンションを備える。そして、音をすべて消していくわけではないが何故か車内空間は快適だ。人間のことを本当に考えて作られたGTカーだと思う。



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