バチコの話

  突然ですが、バチコというものをご存知でしょうか。私はこの正月に初めて知りました。


 形が三味線のバチに似ているからバチコと呼ばれています。これはナマコの卵巣のみを摘出し、干して熟成させたものです。余談ですが、ナマコの腸は"このわた"と言われ、日本の珍味として重宝されております。このわたも非常に上品で美味しいですね。そして、このバチコは更にその上を行きます。バチコは、地方に寄っては"くちこ""このこ"という名称で呼ばれる場合もあるようです。

 さて、このバチコですが、非常に上品な魚介のおいしさのオーケストラのような味がします。こ、これは高級和食の万華鏡や〜みたいな味です。例えるならば、アワビの肝とホタテの貝柱と鮭トバからエグみを取り除き、香りと旨味を天日干しにして固めたような味です。鮭トバと言っても市販されているものは乾燥機を使って短時間で作られた偽鮭トバがほとんどでありますが(余談ですが、楽天市場では乾燥機を隠しもしない正直な業者もたくさんあります)、ここで指すのは本当に潮風の寒風にさらして作られた鮭トバの匂いです。乾燥機を使わずに作った本物鮭トバは豊かな大海原を感じさせます。閑話休題。バチコを一口かじって、噛んで噛んで香りが口いっぱいに広がったところで飲み込んで、その後に飲む日本酒が本当に天国(と通風)に直送されるような味がします。バチコと組み合わせる場合は、メロン臭のする最近の流行の日本酒を避け、上品な9号酵母系の日本酒を熱燗にしていただくのがおすすめです。これ年中やってたら絶対早死するな……という気持ちになりますが、特別な日には特別なお酒、特別な食材でいただくのもオツなものですね。


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