チタンにはスレッドコンパウンド(銅グリス)?

 チタンといえば固着です。自転車のチタンボルト、あるいはチタンフレームには固着防止のためにスレッドコンパウンド(銅配合グリス)を使えというのが定説で、半ば宗教的に信仰されています。ではなぜチタンにはスレッドコンパウンドなのか?という疑問が生じます。

 真面目に考察している人で、よく見れるのが電蝕説です。
 F-engineering氏によると
いわゆる、電蝕というヤツです。詳しい事はググってもらうことにして、簡単に説明すると、イオン化傾向の違う2種の金属の間に電解液が存在すると金属イオンが出来、腐食するということです。 」
(https://f-engineering.blogspot.com/2013/08/blog-post.html 2020年7月16日確認)
とあります。
 国産のチタンボルトで有名なベータチタニウム様のブログによりますと
 「これで鉄からもチタンからも電気は銅に流れるのです。殆どのバイク、車の主要鋼材で起こりうる異種金属接触腐食が防ぐことが可能です。」
(http://www.b-titanium.com/blog/page/37 同上)
 とあります。

 ここで電蝕説について検証してみます。電蝕とは、2種類の金属が接触したときにイオン化傾向(雑にいえば反応しやすさ)の卑(反応しやすい)な金属が腐食することです。例えば、鉄と亜鉛であれば亜鉛のほうが卑です。この効果を利用したトタン屋根は、この効果を利用してわざと鉄の板に亜鉛を塗布し、亜鉛が腐食することで鉄が腐食しないようになってます。
 イオン化傾向は電位で表すことが出来ます。ここで各金属素材の電位を確認すると

アルミ -1.68V
チタン -1.63V
鉄   -0.44V
銅    0.34V

となります。
 このマイナス値が一番高いものから腐食すると考えていただいて大丈夫です。(余談ですがこの図を見るかぎりチタンとアルミは同程度腐食しやすいのです。しかし、アルミではチタンほど固着は警戒されません)チタンと鉄が接触した場合、チタンが腐食することになります。ではここに銅も加わるとどうなるでしょうか。結果は変わらず、チタンから腐食することになります。つまりチタンと鉄に銅を加えても、結果は変わらずチタンが腐食します。こうしてみると電蝕説は信憑性が低いでしょう。

 ではスレッドコンパウンドは意味があるのか?というわけで、チタン車のスレッドBBにスレッドコンパウンドを用いて、友人にシバキ倒してバラしてもらいました。
結果から言うと、「固着はしていないが、残っているグリスは単なるスレッドコンパウンドよりも粉っぽい」ということでした。おそらくですが、スレッドコンパウンドの銅粒子が固体潤滑剤として長く残るために固着しにくいということではないかという仮説をここで立てておきます。実際に、PTFEという固体潤滑剤を配合しているグリスで「チタンに使える」ことを謳っている商品がいくつかあります。
 チタンにスレッドコンパウンドを塗ること自体は間違いではないが、それは固体潤滑に寄るものではないかというお話でした。

 では、なぜチタンにスレッドコンパウンドなのか、それはいつから言われ始めたのかということを、先達に訪ね回ってみたのですが答えは得られませんでした。そこで、ここからは推測になります。もともとチタンボルトはオートバイレースで使われていました。特に、耐熱性が高いことでブレーキ周りに使われていたと聞きます。そこで、耐熱性を売りにした(マフラー周りの固定などに使われていた)スレッドコンパウンドを使ったら固着せずにうまくいったことから広まったのではないかと疑っています。ご存じの方がいらっしゃいましたらコメントまたはツイッターでご一報下さい。
 チタンに限らず固着が怖い場所にはとりあえず塗っておけば間違いないのでスレッドコンパウンドは便利ですよ!これもまた”信仰”ですね。

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