pui pui 愚か(オロカー)試乗。その驚きの動力性能とは
久しぶりに凄まじいものに乗りました。スペーシアです。
スズキスペーシアはスズキが発売している軽スーパーハイトワゴンで、広々とした空間や軽自動車なのに上質な装備が特徴です。
車体寸法は全長 3,395 mm x 全幅 1,475 mm x 全高 1,785mmで、ホイールベースは2460mmと、軽自動車の規格をいっぱいに使ったサイズとなっています。
その中でも今回乗ったのはスペーシアカスタムで、乗り出し250万円の車体。
エクステリアはノーマルグレードからヘッドライトが精悍なものに変更され、タイヤもスポーティーな15インチヘサイズアップされています。
インテリアは合皮の加飾、後部席左右のテーブル等が追加で装備されます。
この車のエンジンは最高出力64馬力で、それを副変速機付きのCVTが伝えます。また、マイルドハイブリッドも装備されており、助手席下に追加バッテリーが置かれています。
車体カラー職は11色で、グレードは5種類用意されています。
現在、このような車格の車が日本で人気になり、一般的な車になりつつあります。皆様もいかがでしょうか。
まず、乗り込んで驚くのはドラポジが出せないことです。ハンドルにはチルトしかなく、バックレスト角度とシートの前後ラッチは非常に間隔が粗く、高い箱に合わせたポジションを取ろうとしてもハンドルは非常に低いところについています。後述しますが車高のもっと低いアルトの部品流用が祟っているのでしょう。
動力性能ですが、660ccターボにオルタネーターを利用したマイルドハイブリッドが追加されたモデルです。トランスミッションは副変速機付きCVTです。まあこれが酷いもので、副変速機が動くときにトルクが派手に抜けて大きなピッチングが出てまるで富士急ハイランドの"ええじゃないか"、アクセル一定でもどんな加速度が出てくる分からないさまはまるで"ドドンパ"です。おまけにブレーキを一定で踏んでいても様々な制御が出入りして減速Gは何度も波打ち、どこで車が停止するかは予測不能でドキドキして、"高飛車"の気持ちを味わえます。都内を走って18km/lの燃費はコンパクトカーとしてまあギリギリ及第点ですが、マイルドハイブリッドはCVTラグやターボラグの本当に欲しいときにトルクをくれることはありません。少なくともハイブリッドグレードは選ばなくて良いと思います。せっかくいろいろドラを頑張って乗せていますが、車重が910kgもあるので梨の礫です。
ボディ剛性は体感で旧規格軽四未満です。左足からはフロアが常時震え続けているのが伝わってきて、エンジンのすりこぎ運動は音とハンドルから常時感じ取ることができます。さらに、あるとでも限界だったのに流用しているであろうフロントサブフレームの剛性も不足しているのか、操舵してから一定の歪みラグがあってからフロントの横力を感じます。かと思うと、リアタイヤが踏ん張って強めのアンダーステアに仕立ててあることを感じさせます。ところが、突如としてアルトからの流用であろうリアの半車軸式サスペンションのブッシュが潰れてトーアウトに移行し、車体が内へ巻いていくかのうような挙動が出ます。
また、ここまで背の高くトレッドの狭い車体、フロントスクリーン周りの処理のまずさが祟って横風に強烈に持っていかれます。それを極めて低いボディ剛性、キャパオーバーのサブフレームやブッシュアームがてんでバラバラに動きながら受けるので、車体が3次元的に揺れながら走っていきます。
安い車ならそれも良いのでしょうが、本車は高付加価値軽自動車にふさわしく、謎小物入れが大量にあります。極めて底の浅いトレーにはUSBポートが付いていてスマートフォンを置くことを前提としているのでしょうが、こんなものでは衝突時にスマートフォンが車内を飛び回ることになります。寝ながらスマホを持っていて顔面に落として痛い思いをした人はわかると思いますが、スマートフォンがすっ飛んでくるのは非常に危険です。が、そのような衝突試験はないのでこの車は販売可能なのでしょう。
リアシート周りはもっと酷いものです。まずバックレストの剛性が足りておらず、私が背中を預けただけで上端で3cmくらいたわみます。その上で、謎に前後スライド機構がついており、ほとんどリアガラスに頭をぶつけるようなポジションを取ることもかのうになってしまっています。
シート下部が稼働するオットマンもどきもついています。芦田愛菜が登場するCMでも主張されていますが、前席との距離を考えると、一般的な身長の人間が使ってなおかつ衝突事故を起こした場合、足が前席と挟まれて骨を折る可能性があります。メーカーとして把握しているのか、公式サイトだと以下のような記述があります。
”写真は駐車して休んでいる状態です”
衝突安全試験のモードに存在しないからやって良いのでしょうか。このような車の想定顧客が車に精通していないことはメーカーも知っているはずで、その上でこのような機能を実装したら走行中に使われる可能性が当然あります。そのうえでわざわざこの機能を実装することに関しては、道義的責任が問われるべきではないでしょうか。
後部座席用のテーブルの装備も疑問です。衝突時に後部座席の人が大怪我を負いかねないところに装備されており、マニュアルによると停止時のみ使ってくださいとありますが、走行時に使われることも当然あるでしょう。何度も言いますが、これは車に精通した人間向けの車ではないので、フールプルーフの考えから実装していいとは思えません。
また運転してみてわかったのは、車がどこに飛んでいくか分からず、60km/hくらいから常時消耗を強いられることです。私が普通車で追いついても走行車線に戻ってくれないハイトワゴンは、レーンチェンジする余裕がないからなのだということが少しわかりました。
全体的に、このパワーパックで売って良いのか、この減速時の制御で売って良いのか、このボディ剛性で売って良いのか、この横G入ったときの動きで良いのか、この機能をつけて売って良いのかという疑問の山に襲われました。一般的な道路の流れに乗れる乗用車ではないし、そもそもとして軽自動車規格の中で背を高くして空間を広げるというのはいかがなものか、軽自動車規格は本当に必要なのか、660cという排気量に意味はまったくないのではないか。ユーザーが望むからといって本来必要な安全性・動質を犠牲にするのは、人間の命を乗せて走る自動車において許されるべきことではないように思えます。このような生命の尊厳に十分に敬意を払っていない製品ばかりがあふれると、自動車自体のコモディティ化のみならず、個人が自動車を所有しなくなる時代まで一直線ではないでしょうか。


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